指の腱鞘炎(ばね指)
まず指の構造ですが、指を曲げるために必要な腱(屈筋腱=くっきんけん)を保護するために、腱の表面は滑膜性腱鞘(かつまくせいけんしょう)という薄い被膜で覆われています。この滑膜性腱鞘に包まれた腱が指の曲げ伸ばしの際に骨から離れすぎないよう、骨に沿う通り道を作り出し、押さえつけているのがトンネル状の厚い繊維でできた靭帯性腱鞘(じんたいせいけんしょう)で、滑膜性腱鞘に覆われた腱が靭帯性腱鞘の中を滑るように動くことで安定してスムーズに指を曲げ伸ばしできるようになっています。指を動かす際には、滑膜性腱鞘は常に靭帯性腱鞘と直接触れ合っており、摩擦をくりかえしている状態ということになります。
滑膜性腱鞘または滑膜性腱鞘と靭帯性腱鞘の両方が炎症を起こし、厚みを増してしまうこと(肥厚)が原因でばね指は発症します。靱帯性腱鞘を通れなくなっても指を曲げよう(伸ばそう)という腱の力を働かせると、トンネル(靱帯性腱鞘)の入り口部分で腫れて肥厚した滑膜性腱鞘が引っかかり、ばねを無理やり縮めたような状態になります。さらに力を加えるか、もう片方の手で指を伸ばすと、この肥厚した部分がトンネルを少しずつ通過していきます。通過中は狭い中を無理やり通るためにゆっくり動きますが、出口まで到達すると今度は勢いよく飛び出します。それまで縮めていたばねから手を放すと、一気に元の状態に戻るばねのような動きをすることから、ばね指と呼ばれています。
滑膜性腱鞘や靭帯性腱鞘が肥厚する主な原因は、互いへの摩擦のくりかえしによるものです。手を使いすぎると何度も靭帯性腱鞘の中を滑膜性腱鞘に包まれた腱が通るため、過度な摩擦が起こります。熱を持ち、さらに摩擦をくりかえすことで炎症に発展してしまうのです。
女性の場合は、加齢や出産でホルモンバランスが崩れ、血流が悪くなります。手の血流が悪くなると腱鞘が狭くなり、腱や腱鞘が緊張状態となりやすくなります。腱や腱鞘の摩擦が強くなることで炎症や肥厚へとつながり、ばね指が起こりやすい状態となります。
ばね指を発症しやすい方の特徴を以下にあげています。この特徴に当てはまる方は今後ばね指を発症する可能性があるため、生活の改善や注意が必要です。
・指先を酷使している方
・妊娠~出産後の状態にある女性
・閉経後や更年期の女性
・腱が短く、緊張状態にある方
妊娠や出産後、閉経後や更年期にさしかかる女性の方はホルモンバランスがくずれやすいため要注意です。女性のばね指に影響しやすいものとして女性ホルモンのエストロゲンやプロゲステロンがあげられます。
エストロゲンには、腱や腱鞘を柔軟に保つ効力や血管を拡張する作用があります。妊娠や更年期を迎えることにより減少するため、腱や腱鞘の柔軟性が低下したり、血管が萎縮し血行が悪くなり、ばね指を引き起こしやすくなります。
プロゲステロン(黄体ホルモン)には、産後、出産のためにゆるんだ子宮や骨盤を元に戻す効果があります。 そのために、腱鞘を収縮させますが、ホルモンは全身に影響します。 出産と関りない手の腱鞘も狭くなり、腱と摩擦を起こしやすくなります。また、食生活やストレスなどで自律神経が乱れてしまうことで、血液の流れが悪くなり、緊張状態にあると腱鞘部分の摩擦が大きくなります。
少しでもこのような症状で気になった方は是非一度相談だけでも構いませんのでご来院ください。